実弾 80件・勝率 61.3%・円ベース −2,490円。 SELL・BUY両モデルの検証でエッジなしが判明し、121本以上のエッジ探索も全却下に終わった記録と、それでも続ける理由。
2026年6月6日にBOTを止め、2026年6月8日に再開した。 「ずっと止めずに動かし続けた」とは書かない。一度止めて、それでも再開した事実を、 そのまま記録する。
ある朝、SELLモデルの予測確率を確認したところ、何日経っても同じ数値が並んでいることに気づいた。 本来なら相場の動きに合わせて変化するはずの確率が、まるで壊れた温度計のように同じ値を指し続けていた。
「何かがおかしい」。そこから調査が始まった。
AIが自分自身を診断する、というやや奇妙な作業をおこなった。 複数のAIエージェントをそれぞれ独立に動かし、推測ではなく実際のモデルファイルと相場データを使って、 確率が固定される原因を突き止めた。あるエージェントの結論を別のエージェントが批判し、 また別のエージェントが裁定する。3つが合意した事実だけを採用するルールで進めた。
表層:バグ(修正済)。
SELLモデルの学習ファイルに、XGBoostの推論が1本目の木だけで止まってしまう構造上の問題があった。これは修正できた。
深層:修正しても問題は残った。
バグを取り除くと、より根本的な事実が顔を出した。そもそもSELLモデルは、相場の下落を予測できる材料を持っていなかった。
予測精度(OOS AUC≈0.5)は「コインを投げるのと同じ」を意味する。
バグが消えると、学べるものが何もないというモデルの正直な告白が現れた。
同じ厳しい検証をBUYモデルにもかけた。バックテストの数字は良く見えていた。 しかし実際の取引80件を統計的に分析すると、利益が偶然の範囲を超えているとは言えなかった(p=0.735)。 さらに手数料・スプレッドを引くと期待値はマイナスになる。 バックテストが良く見えたのは、プログラムが誤って未来の情報を参照していたことが原因だったと考えられる。 「負けが確定」ではなく、「勝てるという根拠が確認できない」——それが正確な状況だ。
こうして、「SELL・BUY両方にエッジがない」という状況が明らかになった。 そこから、次の問いが始まった。「エッジがないなら、何を探せばいいのか。」
2026-04-08 〜 06-04 (JST)。BUY方向 80件・exit_time確定済みのみ集計。
80件で観測された期待値(+0.83 pips)は、統計的にゼロと区別できない(p=0.735)。
スプレッド 2.5 pips を控除した後は実質マイナスとなる。
「勝率6割なのに円でマイナス」の理由は、負けトレードの平均サイズが勝ちより約24%大きいことにある。
勝ち負けの件数よりも、一回あたりの損失の深さが収益を食っている。
数ヶ月かけて、三つの方向からエッジを探した。方向性(モデルが相場の上下を正しく予測できるか)、 キャリー(スワップポイントの構造的な優位が使えるか)、分散トレンド(複数の資産クラスにまたがる傾向を捕まえられるか)。 この三軸で USD/JPY 1時間足のデータを使い、コスト控除後・多重検定補正後・アウトオブサンプル(OOS)の 基準を満たすかどうかを、合計121本以上のテストで検証した。
結果は全却下だった。 唯一ゲートを通った候補(週足・月足の分散ポートフォリオ戦略)は、 非相関な15以上の資産クラスへの同時投資を前提としていた。 GMO FX はFXペアのみを取り扱っており、この戦略は現構成では機能しない。
FX 自動売買、EA、コピートレード。これらは「月利〇〇%」「勝率〇〇%」という数字とともに 宣伝されることが多い。特定のサービスを名指しにするつもりはないが、一般論として問いたいことがある。
その成績は、コスト控除後のものか。アウトオブサンプルで検証されたものか。多重検定の補正を経ているか。
自動売買の「エッジ」を主張するには、これらをすべて満たす必要がある。というより、 これらを満たさない限り、バックテストの結果は「たまたま過去にうまくいった設定を選んだ」 以上の意味を持ちにくい。
私がやったのは、「ない」と言えるまで確認することだった。 エッジを厳しく探した結果、現構成ではエッジがないと結論した。 これは誠実な結論だと思っている。
「自動売買で損するのは、手動より早い」——エッジなし自動売買の本質。
FXにはスプレッドが必ずかかる。エッジがゼロの状態でトレードすれば、大数の法則によって 回数を重ねるほどスプレッド分だけ確実に損失に近づく。 システムが1時間ごとにエントリーを判断する構造なら、この「確実なマイナス」を 人間の裁量より何倍もの速さで積み重ねることになる。
エッジなし状態でも連勝が続くことがある。確率論的に当然起こりえることだが、 人間はそれを「システムが効いている証拠」と解釈しがちだ。 エッジが無い以上、増額はそのまま損失の増幅につながる。 連勝をまぐれと区別する統計的根拠がなければ、投下金額を増やす判断は根拠を持てない。
エッジが確認されていないと、「今は相場環境が悪いだけ」「もう少し待てば戻る」という 判断の根拠が存在しない。どこで止めるべきかを論理的に語れず、 損失が続いても「信じるか諦めるか」の二択しかなくなる。 客観的な撤退基準は、エッジの定量的な定義があって初めて作れる。
「ゼロに何を掛けてもゼロ」——エッジなし改善の数学的な真実。
改善すべき「何か」が定義できない。 エッジとは収益の源泉、つまり「なぜ勝てるか」の根拠だ。その根拠が未定義の状態では、 何を改善するのかが定まらない。パラメータを調整しても、発注タイミングを変えても、フィルタを追加しても—— それらは「すでに存在する優位を増幅するための道具」であり、「優位を生み出す装置」ではない。
今回の再開では、発注方式を成行注文から指値注文に切り替えた。 約定タイミングを改善して執行コストを削減しようという試みだ。 しかしこれは「執行改善」であり「エッジ創出」ではない。 エッジが確認される前は、効果があっても限定的で、「コストを少し減らす」以上の意味を持ちにくい。 指値注文には逆選択のリスク(シグナルが出ても約定しないケース)もある。 エッジが確認された後にはじめて、執行最適化が真価を発揮する——という順番は変えられない。
試すほど「幻のエッジ」を本物と間違えやすくなる。 多数のパラメータを試すと、偶然に良い結果を出す組み合わせが必ず出てくる(多重検定問題)。 試行回数が増えるほど、本当は無意味なのに「当たりに見える」ものの確率が上がる。 これはバックテスト過学習の典型的な経路だ。 SELLモデルでは約25フェーズにわたる改善を試みたが、 外部検証データでの予測精度はほぼ0.5(コインフリップ)から改善しなかった。 パラメータを変えるたびに「改善した」と見えることはあったが、それは過学習によるノイズだった。
結局「エッジを探す」という出発点に戻るしかない。 改善の末にたどり着く結論は、「そもそも勝てる材料があるのか」という問いだ。 「学習したら何かわかるかも」という盲撃ち型の開発は、時間と計算資源を消費しながら、 偽の発見を積み重ねるだけになりかねない。 本当に意味のある改善は、「統計的に有意な優位(エッジ)の発見」から始まる。 それが確認されてはじめて、モデルの構造、パラメータ、執行方法の最適化が意味を持つ。 順番は変えられない。
2026年6月6日、BOTを止めた。実弾を動かし続けることに、合理的な根拠が見つからなかった。 統計的にゼロと区別できない期待値のもとで証拠金を晒すことの意味が、わからなくなった。
「エッジがないならやめる」というのは、合理的な判断だ。
2026年6月8日、再開した。
マイナスでも向き合い続ける姿勢の問題だ。止めたままにした場合、残るのは「うまくいかなかった」という記憶だけで、 「どんな条件でうまくいかないのか」という知識には変わらない。 動かし続けることで、データは積み上がる。
現在の残高は数万円規模(約 37,000 円台)だ。 最初から「勉強目的」という位置づけを持ってこのプロジェクトを始めた。 小さな実弾で動かし続けることは、シミュレーションよりも質の高い学習になる。
エッジ探索は「GMO FX 単一ペア・現構成」での話だ。将来の構成変更を検討するための地力を、 今のうちに積んでおく意味がある。動かしながら観察を続けることで、見えてくるものがある。
今回の再開はただ動かし直したわけではない。検証で判明した執行コスト(スリッページ)の問題を踏まえ、 発注方式を成行注文から指値注文に切り替えた。 利確・損切りを同時に出す決済方式(OCO)はそのままに、エントリーだけを指値にすることで 少しでも不利な価格での約定を減らす試みだ。 効果は今後の観測次第だが、学べることは学びながら動かす姿勢の表れだ。
「エッジがない状態でBOTを動かしている」ことを、私は隠したくない。 週次レポートで成績を公開するのも、勝率が高い週だけを選ぶためではない。 「自動売買の実際のところ」を、よい週も悪い週も含めて記録するためだ。
一度止めて、それでも再開した。その事実そのものが、今の状態を正確に表している。
「儲かっている」とは言えない。「エッジが確認できている」とも言えない。 それでも向き合い続けることに、今は意味を見出している。 次のエッジ候補が見つかれば、厳しく検証する。見つからなければ、また「ない」と言う。 その繰り返しの中に、何かが積み上がっていくはずだと思っている。
注意事項: 本ページの集計は JST 2026-04-08 〜 06-04 の BUY 方向・exit_time 確定済みトレードのみを対象とする。 期待値の統計検定(p=0.735)はサンプル 80 件に基づき、サンプル数が小さいため結論は暫定的である。 本ページは記録・参考資料であり、特定の投資戦略・金融商品の売買を推奨するものではない。 投資の判断はご自身の責任で行ってください。 過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。
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